-DIYリフォーム歴代記録1- POPEYEのいえ 2001年

-DIYリフォーム歴代記録1-  POPEYEのいえ 2001年

2001年当時、私は某美術大学の学生。大学近くに間借りした格安の平屋を改装したのですが、それが青年カルチャーのバイブル誌「POPEYE」のインテリア大賞 に選ばれるという当時では自分史上いちばんの快挙となります。 その頃はまだDIYが浸透してなくて「好きな人はやるよね」ってくらいだったので、ただもの珍しかっただけだろうと思うけれど、自分の改装史には間違いなく残るおはなし。19年経った今となっては、若かりし頃の行動力や試行錯誤がまぶしい限りです。

この家に住むことになった背景

1. 実家からの通学にムダを感じる

実家からキャンパスへは約1時間半。入学から1年通ったものの、よく考えれば「通学費」もバカにならない上に「時間」がもったいない。「…これ一人暮らししても、色々とんとんなんじゃない?」と気付きます。
早々に親を説得して、大学近くの6畳1Kのアパートで一人暮らしを始めました。大学までは原付で5分、アパート前のユニクロでバイトもしてイメージ通りのとんとんな感じに。

ミラーに写る2階建てのアパートをカメラで撮る人物
アパート前で一人暮らしの記念に撮った写真

2. 部屋に創作と自由を求め始める

でも、ここは見ての通りいわゆる「普通のアパート」。2年生の終わり頃になにか物足りなさを感じます。授業で実習も増えてきて「何かを作りたい欲」に満ち溢れていた時期でもあり「絵の具こぼしてもいい」とか「木を切って音だしていい」とか「アトリエみたいな、なんでもやっていい部屋が欲しい」なんて事を考え始めていました。自分がこれから住む部屋に「創作」と「自由」の同居を求め始めていたのです。

つなぎを着て木を粗目ヤスリで削る
木工実習で木を削る様子

3. 解体寸前の長屋に出会う

そんな折に先輩から「油絵科の先輩が住んでたボロい長屋みたいのがあるよ。あそこなら創作活動とか自由だと思う。」との情報が。しかも一部屋空いているらしい。
なにそれめっちゃいいじゃん!ってことで、すぐさまその油絵科の人を訪ねてジュースをおごり、不動産屋さんの電話番号をゲットしてその日に電話します。 ところが、不動産屋さんの話によると「大家さんがボロボロだからもう解体したいって言っててねぇ…再来月には壊し始める予定なんですよ」との事…。
せっかく「ボロい長屋=何してもいい」みたいな期待が浮かんでたのに…!と落胆しました。

しかしそこは若者として勢いもあったのか「この物件は逃しちゃだめだ!」と、その長屋の坂の上にあるという大家さんの家に菓子折りを持ってあいさつに行ったのです。
美大生である事や、部屋をどう使いたいか、そうする事で自分がどう変われるのか、など色々言った様な気がします。最後だけ覚えているのは「卒業までの2年でいいのであの家で勉強させて下さい!」と頭を深々と下げた事。最後は大家さんは笑いながら「それだけ頼まれちゃあ仕方ないな。火事だけは気をつけてね。」とあっさりとOKしてくれたのです。

ボロボロの長屋

そんなこんなの勢いで、のちの「POPEYEのいえ」に住まう事になったのですが、はっきり言ってボロかった!

古い民家の外観
ボロボロの長屋

上の写真でお分かり頂ける様に、今見るとマイナス要素たっぷり。「そりゃ解体しますわな」という物件です。ぼっとんべんじょ、シャワーなし、基本汚い、隙間だらけ、みたいな。しかも長屋だと思っていた物件は、実は半分に区切られていて、反対側には同じ形の玄関がある。しかもそっちには同じ大学の油絵科の学生が住んでるというんだから笑えました。

ただ、大学がいくつも集まるエリアなので物件の相場は軽く5、6万を超えてきます。思ってたスペースの半分になったものの、アトリエ兼住居にできる稀有な物件として家賃 3万3000円 はそんなマイナス要素を打ち消すのに十二分だったのです。(木造平屋、6畳二間、キッチン、トイレ別)

創作意欲が湧く部屋を目指してDIYで改装

さすがにこの状態のまま住むのはテンションも下がるのでDIYで改装する事に。というか、それ含めて勉強する心づもりでした。初めのアパートからも近い場所だったのと、大家さんがいい人で「住み始めるまでは家賃いらないよ」って事で、しばらく大学、バイト、DIYの三重奏を奏でます。

1. 畳をはがして2×4材の床に貼り替え

古い民家の部屋の写真
元は古い畳だった
(ビフォー)
あめ色に塗った2×4材を並べた床
2×4材を敷きウレタンニス塗装
(アフター)

まずは畳が古かったのではがして、ただひたすら2×4を貼りました。(仕上げはウレタンニス)畳の厚みは55mmでしたが「2×4材 38mm + ベニヤ12mm」で5mm下がった仕上がりだったと記憶してます。
ちなみに当時はホームセンターで 2×4材の6フィートが¥121 (今では5倍の価格!)でしたから、今では無垢のフロア材でもメルカリとかジモティーで探した方が安あがりかもしれませんね。
あと、定尺貼りとかヘリンボーン貼りとかにすればもっと面白かったんだろうけど学生の初DIYにその知識はなかったんですね。今ではそんな事も普通になってますが、当時素人でやってる人はほとんどいなかったんですよ。ほんとに。

2. 余った2×4材で棚とかテーブルとかもDIY

床貼りで余った2×4材は棚とかテーブルとかに。

2×4を利用したCD陳列棚とブロック状の2×4材を組んだ棚
2×4ブロックのラックとシェルフ
2×4材を利用したテーブルに砂利を入れておしゃれに
テーブルと鴨居のCDラック

2×4材の半端な余り材をブロック状に短く切ってダボでつなぎ併せた棚(写真左)とか、テーブルの真ん中に箱庭的なスペースを設けて砂利を敷き詰めて喜んでみたり。取り外した鴨居(ふすまとかの上レール部分)は逆さにしてCDラックに(写真右)

3. 押し入れはとりあえずぬく

押し入れはとりあえず中段を抜いてひと続きに。床にはタイルカーペットを。天袋も抜いても良かったんだけど、見た目があっさりし過ぎるし洋服とか掛けたかったのであえて残してアートっぽい装飾も施して見せる収納スペースに。(天袋の装飾は、正方形を切り抜いた時に残った端材を当てながらスプレーして模様を出した上に板を貼っている。)

古い民家の押し入れと天袋
古い押し入れ
(ビフォー)
押し入れにディスプレイの様に収納した服やCDや小物
見せる収納スペースに
(アフター)

押し入れの有効利用は、この当時でも流行ってて同級生の家でもDJブースにしたりとかデスク代わりにしたりとかしていた記憶が。そのせいか今では押し入れを見るとすぐ中段を抜く事を考えてしまいますが、同時に布団の衣替えとかを考えたら隠してしまうのにとても便利な空間だなとも思ったりします。

4. ぼっとん便所をなんとか楽しい空間に

この家の1、2を争うネックだったぼっとん便所。雑誌でも取り上げられなかったし、記憶から消したかったのかあまり写真はありませんでしたが、和式便座には簡易洋式便座を載せて壁は鮮やかなブルーで塗装、流木のペーパーホルダーを付けたりフライヤーを貼ったりして少しでも生活感をなくそうとしてました。

和式のぼっとん便所の写真
完全なるぼっとん
(ビフォー)
トイレの古い手洗い場の写真
壁の汚れも気になる
(ビフォー)
トイレの青く塗られた壁と流木のペーパーホルダー
塗装し直して飾る
(アフター)

まあ実際の所、トイレはトイレ。頻繁に手入れしないと臭いもあるし、いま家のトイレがこれって言われたらはちょっときついかな。。もちろんアトリエのトイレとして見れば十分でしたが。。

5. 玄関に砂利を敷いて

玄関には丁度いい靴箱が元からあったので、引戸を外してヤスリ掛けしてオイルステインで塗装したのみ。流木を置いたら雰囲気も出ました。

古い玄関
昔ながらの玄関
(ビフォー)
砂利を敷いた和風の玄関
砂利と流木で雰囲気〇
(アフター)

ホームセンターで買ってきた砂利を敷いて踏み石代わりの木を置いて旅館風に。一度知らない人が間違えて入って来た時に、この砂利の音によって数秒で防御態勢に入れたのは良き思い出です…(反対の入口の玄関と間違えたみたい)

6. インテリアに廃材を利用

普通なら捨てる廃材もインテリアの一部として再利用。そういう「気づき」とか「発見」が面白い事に気づいたのも、そういえばこの頃でした。

バイクの部品をインテリアとして見せる

クラッチのお香立て

吊り束をそのまま利用して照明

吊り束の照明

廃材を利用したシェードランプ

ブリキのランプシェード

既存の照明を分解してスケルトンにした照明

置き型照明の再利用

黒く塗装されたコトブキ社の座椅子

椅子の座面を座椅子に

大学の二輪サークルに捨てられていたバイクのパーツ(一番左)やコトブキ社の座面(一番右)は拾ってきたもの。洗ったり塗装する一手間で「世の中になくてなんか良いもの」になるのを楽しんでました。
壁を取り払った際の吊り束はそのまま天井照明にしたり(左から2枚目)、ブリキの端材は展開図を描いて組立てシェードにしたり(真ん中)、既存の置き型照明を分解してスケルトンにして間接照明にしたり。

7. コンクリ土間の風呂場も開放的なアジア風?に

1、2を争うネックの2位くらいの風呂場。冬はとにかく寒かった。シャワーがないので、沸かしたお湯をすごい速さで掛けて高速で頭と体を洗い、急いで出ていたお風呂。少しでも気分が明るくなるように油性ペンキで黄色と黒に塗ってみました。上の方を塗る時にハシゴから落ちて、浴槽にすっぽりハマった時には一人で大爆笑しました。

コンクリ土間の風呂場
寒々しいコンクリの風呂場
黄色に塗って明るく

夏は写真のドアを開けたまま水浴びしてかなり開放的なお風呂タイムだったのも良き思い出。

POPEYEのインテリア大賞に輝く

そんなこんなで、まあ住めるかなってくらいに改装が完了した頃にPOPEYEのインテリア大賞に応募したらなんと大賞に。ちゃっかり10万円もゲット!初めは友達に改装なんてやめた方がいいって言われてたんだよなぁ。

インテリア雑誌に掲載された写真

それなりに労力も使ったのもあって、「努力がカタチとなって報われた」とても良い経験だった。これが自分史の中であるとないとでは、その後の人生も違ったかな、と思う訳です。

和風ミックスのDIY部屋に集まる友人達

もちろん今見ると突っ込みどころ満載だけどなんせ19年前。無知な事も災いしたのかもしれないが、直感に従い行動したその行動力は素直に褒めてあげたい。これは今でもとても必要な事だから。
ただ、こうして振り返ると今だから気づく事もあったり、自分の成長を感じられる反面、やってる事かわらんなぁとか、こここうしとけば良かったなぁとか、後悔も出てくるわけで。

ライフログとしても機能する事を狙ったブログだから、自分が振り返ったり考えを整理したり、はたまた自分の子供に見せてみたり…。その辺りどう作用して影響してくるのか…。なんとも今後が楽しみです。

というわけで、こんな古い内容のかなり個人的なブログ記事にたどり着いてしまったあなた。ごめんなさい!でも、まだまだこういった民家は地方にたくさんある訳で、これから何らかの理由でそこに住まう事になった方々に民家に対する勇気と希望っぽいものが届けば幸いです。